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2005年09月19日

ブックレビュー「利己的な遺伝子」

利己的な遺伝子」(著:リチャード・ドーキンス) の個人的感想を.
結構古くて有名な本なので読んでる人は多いみたいだけど.

この本は,生物の行動を「生物個体単位」から「遺伝子単位」に視点を移してダーウィンの進化論が展開されていってかなり面白かった.
生物のさまざまな行動が,一見不思議に見える行動さえも,「遺伝子」のその行動を発現させる部分自体がそれによって増殖することができるからこそ,その遺伝子は自然淘汰の中で勝ち残ることができたということらしい.
また,そのため真に自己犠牲的な行動(利他的行動)は存在せず,また「種」や「群れ」の保存・繁栄というモノは存在しないとも本では述べられている.

自己犠牲は存在しないはずないという反論に対しても,「そんな遺伝子が突然変異で生まれても,その遺伝子を持った生物が結局自己犠牲で死んでしまうからすぐに淘汰で消えてなくなってしまう」という説明も納得がいった.
それと同時に,一見利他的行動にみえる行為すらも,確率的な計算をすればまるで天才的な数学者が計算をしたように微妙なバランスで,利他的に見える行動を起こす遺伝子が増殖する例が数学的な記号や数式を使わず示されていたのがスゴイ.

たとえば狐に雛が襲われた親鳥は,自分を犠牲にして狐の注意を雛の居る巣から逸らす行動をする.
そういったモノも,「子供を守る」遺伝子から見てみれば自分の子供にも同じ遺伝子が50%の確率で遺伝している可能性があり,子供数羽と親一羽の生存を天秤にかけて,子供が生き残れば「子供を守る」遺伝子はさらに数を増やせるので「子供を守る」遺伝子は自然淘汰の中で生き残れる,といった色々な例も面白かった.

本の後半はこういった論を全部踏まえた上で,さまざまな生物の行動戦略を「遺伝子の増殖」という視点で何が優れているのかをゲーム理論の立場から説明していたり,遺伝子(Gene)とは別なミーム(Meme)というモノで新たなダーウィンの進化が始まっているのではないかといった話も展開されていた.

全体を通して一貫してダーウィンの進化論を否定するヒトたちの反論を徹底的に崩す強烈な説得力がすごかったけれど,毎回の結論が「ほら,この例でも遺伝子は利己的でしょ」というモノに必ずなってしまうから,400ページ以上あるこの本を全部読みきるのはその点では結構キツカッタ…

でもこれは本当に面白かったので,進化とかに興味のある人はお勧めだと思う.

投稿者 CopyCat : 2005年09月19日 09:17

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